1.根強い人間不信

大学編

大学進学、新たな舞台、新たな環境、新たな出会い。

夢、踊る心、希望。

みんな、キラキラ、まぶしい笑顔。

空は晴れわたり、桜は咲き誇る。桃色の風が、新入生を歓迎していた。

1500人前後の新入生の中で、座右は、ただひたすら、孤独を感じていた。

皆、全国各地、津々浦々から、故郷を離れ、上京しているのだろう。

聞きなれない方言が、あちこちで飛び交っている。

隣の男が、座右に話しかけた。

「どこ出身ですか?」

「○○。」(西日本のどこかです。)

「俺、熊本なんだ。同じクラスだから、よろしくな!」

「お、おう。」

「サークルとか入ると?」

「いや、俺、働かないといけないから、そんな暇、ないねん。」

「え、ああ、そう。それじゃまた。」

→暗い。暗すぎる。そんな返しじゃ、相手、引くわ。ほんまお前、そんなんじゃアカンて。

なんて、今言っても、遅いですけどね。20年も前の話ですから。

「俺は、苦労してるんだ。」

「俺は、大変なことを乗り越えてここにいるんだ。」

「俺ほど苦労している奴はいない。」

言い表せられぬ感情が、自分の胸を掻きむしった。

「だから、『お前たちみたいな苦労知らず』とは、交われないんだ。」

渦巻く感情

一体、何を、どうしたかったのか。

なんとなく覚えているのは、とにかく、

「楽しそうな奴が羨ましくて、妬ましくて、仕方がない。」

という感情が、蓋をしても、何度蓋をしても、ドロドロと、とめどなく溢れてくる。

真っ黒い感情が、どす黒い感情が、他人の笑顔を見るたび、胸の中を激しく暴れ回る。

自分には、楽しい大学生活なんて、ないんだ。

人との関わりを、避けた。

自分の心の中のオオカミが、他人に噛みついてしまわぬように。

髪を金髪に脱色し、ピアスを付け、いつも柄物のシャツを選んだ。

人と目が合うのが怖くて、授業以外は、サングラスをかけた。

いつも下を向き、道の端を、両手ポケットに突っ込んで歩いた。

誰も、俺に話しかけないように。

そんな変な奴に、話しかける者は、誰一人、いなかった。

当時の私があまりにもかわいそうなので、この言葉を、贈ろう。

「ロックだな!そういうお前、俺は好きだぜ!」

なぜ、こんなにも、人に心を開けなくなっていたのか。

なぜ、こんなにも、深い人間不信に陥っていたのか。

それには、深い深い、理由ときっかけがありました。