2.土砂降りの雨の中

大学編

その日は、梅雨時期だということもあり、夜半から、ひどい土砂降りの雨でした。

3月末に上京。

新聞屋の朝は早い。幼少の頃、『パン屋のおじさんが朝いちばん早い』と習いましたが、新聞屋もどっこいどっこいではないかと思います。

三大紙の内の1つの新聞を扱う販売店に配属。

当時、東京都内のとある地域で、全12区域、3000部前後を担当する販売店でした。

毎朝2時半頃起床。

まずは、新聞に折り込み広告を挟みます。

折り込み広告は、平日で平均20枚程、金土は40枚を超える日もあり、新聞と折り込み、どっちを配ってんのかと思う時もありました。

雨の日の新聞配達は辛い

新聞って、『紙』なので、水にめっぽう弱い。

折り込み広告を挟んだ状態で、一応、簡易的にビニールパックをかけるんですが、その機械が、取り合いでした。

専業さん(正社員のこと)が優先で、学生の住み込みは後回しという暗黙のルール。

出し抜くためには、新聞が届く時間を狙って、AM1時頃にスタンバイします。

もう、朝ではないですよね。

そういう日は、前日に天気予報を見ながら、寝ずに配達に出ます。

商品である新聞を濡らさないように気を使いながら、1件1件、およそ250軒(新聞はスポーツ紙等を含めると300くらい)を、原付バイクで配達します。

晴れている日は、3時間弱くらいで配っていたと記憶しています。

これが雨の日だと、ビニールのパッキング作業も含めて、4時間半くらいかかってしまいます。

新聞配達はスポーツ

専業さんの1人がいつも、

『新聞配達は、スポーツなんだ!』

と、言っていました。

バイクでの配達ではありますが、バイクに乗ったままポストに入れられる家はそんなに多くなく、ちょっとバイクで走って、3部くらい抱えて、ダッシュ(足音立てないよう忍者走り)でポストインして、またバイクにまたがって・・・

また、エレベーターの無いマンションや、団地は、基本玄関ポストまで届けるので、階段を上がっては下り、上がっては下がりを繰り返します。(オートロックは集合ポスト)

これ、カッパを着た状態だと、超ムレます。

暖かい時期は、途中からカッパを脱ぎ捨て、

『ショーシャンクの空に』

の名シーンみたいになりながら、配達しちゃいます。

配達の前半は、眠かったりとか、しんどいな~とか思ったりしてテンションが下がっているんですが、カッパを脱いで雨に打たれていると、なんか愉快になってきて、後半、ハイになることも多かったです。

これを『Rainy News Paper アゲアゲ シンドローム』と言います。(ウソです。)

雨の日の原付は危ない

土砂降りの雨の中、原付バイクを運転するのは、非常に危険です。

まず、視界が悪くなります。

そのうえ、マンホールや側溝の蓋、横断歩道の白線などが、水を含んで滑りやすくなります。

更には、新聞を山ほど背中に積んで走るので、重心が安定せず、これまた危険。

この日、私は、約150部の新聞をバイクに積んで販売店を出発。

スタートして5分程の地点で、派手に転びました。

150部のビニールパックされた新聞が、水たまりの上を泳いでいます。

簡易包装なので、水たまりに長く漬けてしまうと、じゃぶじゃぶになります。

慌てて新聞を回収し、バイクに積みなおしたところで、左足の膝の側面に、刺すような痛みを感じました。

転んだ際、左足からアスファルトに接触し、カッパ、ジーパンが破れ、強めの擦り傷を負っていました。

雨が浸みて痛いし、打撲して痛いし。

一旦、お店に戻ろう。

配達は簡単に交代してもらえない

足を引きずりながら、血を流しながら店に入ると、新聞店の所長が、

「転んだのか?慣れた頃が一番危ないんだとこの間教えてやったばかりじゃないか。」

「膝擦りむいたくらいで、配達は交代できないからな。包帯巻いてやるから、頑張れ!」

当時、私の区域を配達できる人は、私と、あと2人、ルートを覚えている人がいました。

が、運の悪いことに、1人は身内の不幸で帰省中。もう1人は、他の区域の人がお休みを取るために、代配(いつもとは違う区域を担当すること)に出ていて、私以外、誰もこの区域を配達できないという状況でした。

足を引きずりながら、いつもより余計に時間をかけながら、配達。

150部を配り終えて、AM5時半。

6時までに配達を完了しないと、クレームが来ます。

残り150部の内、代配から戻ってきた方が100部引き受けてくれました。

足は痛く、土砂降りの雨が、惨めな気持ちに追い打ちをかける。

そんな日に限って、嫌な連絡が来るものです

散々な目に遭い、身も心もボロボロ状態で帰宅。

シャワーを浴びて、ふと、携帯電話を見ると、遠距離恋愛中の彼女から、メールが。

「ごめんなさい。私とはもう別れて下さい。」