1.人は安心したときに現実を思い知る

大学入試編

 祖父母、叔母夫妻のおかげで、雨露を凌げる環境を手に入れた私でしたが、現実問題、どうやって暮らしていくのかという問題がありました。

 叔母夫妻からは、

 「うちも決して裕福ではないので、生活を見てやることはできない。家賃はいらないが、生活費は自分でなんとかするように。」

 と言われました。

 早速アルバイトを探しましたが、高校生のバイトって、意外に制約が多く、決まるのに1週間程かかりました。

 アパートから徒歩15分のコンビニのアルバイトが決まり、17時から22時までの週6日、出勤することになりました。

 その店舗は私が住んでいた地域の、コンビニ本部直営店で、県下売上高ナンバーワンの店舗とのことでした。

 アパートで暮らせることになったのが7月15日で、25日から初めての出勤となりました。

 本当に忙しい店で、レジは4台、夕方からはレジ1台に2人掛かりで接客をしないとお客を捌けないくらいお客が並びます。

人に恵まれることは人生の財産

 このバイト先の店長が、これまた超絶いい人でした。

 詳しい事情までは話しませんでしたが、訳あって高校3年で一人暮らしをしていてお金が必要だと話すと、

 「大変だね。去年おでんの販売で全国30位以内に入ってクオカードいっぱいもらったから、給料出るまでこれで食いつなげよ」と、

 5万円分のクオカードをコッソリ渡してくれました。

 「その代わり今年もそろそろおでん始まるからしっかり売り込みよろしくね!」と、

 遠慮する私に対し、結果で応じろという、ある意味、私が気をつかわないようにという、配慮の言葉をかけてくれました。

 その日の帰り道は、ありがたくて、ありがたくて、

 泣きました。

 ですが、私の心は、次第に将来への不安でいっぱいになっていきました。

 夜、疲れているハズなのに、眠れないのです。

 天井を見つめながら、

 「俺はこれからどうなるのだろう」

 「もう大学に行くのは無理だな」

 「夢も希望もないじゃないか」

 不安は更に私の心を蝕んでいきました。

 「なんでこんなことになったんだろう」

 「借金を繰り返す親父が悪い」

 「頭が錯乱した母親が悪い」

 「あの時ボランティアサークルなんて行かなければ、Yさんと出会うことは無かったんじゃないか」

 「Tさんと付き合っていればこんなことにならずに済んだんじゃないか」

 毎晩毎晩、こんなことが頭の中でぐるぐる回って、答えのない、考えたってしょうがないことを、延々と考えて考えて。

 出口のない迷路を彷徨うとは正にこのこと。 ホームレス状態の時は、

 「生きるか死ぬか」

 というような切迫した状況だったため、ある意味そのおかげで、迷いなく

 「食うこと、今日の寝床を見つけること」

 に専念できていた。

 安心した後に、現実が襲いかかってくるのです。