8.見返りを求めない生き方は美しい

大学入試編

 とはいえ、1度の励ましでパッと変われるほど、私は強い人間ではありませんでした。

 「よし、逆境をバネに、やってやるぜ!」

 と決意をするのですが、現実を目の当たりにすると、現実の厳しさに負けてしまうのです。

 「もし大学に受かっても、入学金や学費はどうしたらいいのか。」

 「バイトが忙しくて、受験勉強する時間なんてないじゃないか。」

 そんな時は決まって、

 「所詮、人生は変えられないんだ。」

 「あんな親の元に生まれた時点で、俺の人生詰んでた。」

 「人生は不公平だな。」

 なんて、後ろ向きなことばかりが浮かんできて…

 そんな私の弱気な心を打ち消すように、S先生は、私に会いに来てくれました。

 約半年の間、2日空けることはなかったと思います。

 S先生は自分だけでなく、S先生の個人的な友人まで巻き込んで、私に会いにきてくれました。

 S先生の自宅から私のアパートまでは車で小一時間程。

 仕事が終わってからなので、いつも23時頃に現れます。

 そのうち、S先生の友人のKさん、Wさんが通ってきてくれるように。

 いつも、

 「おお〜、今日こそは首吊ってるんじゃないかと思ってたけど、まだ生きてたか〜」

 なんて、ブラックな冗談を言いながら。(笑えね〜)

 また、ある日曜の朝、チャイムの音で玄関を開けると、見知らぬおじさんが。

 「Kから、ここに可哀想な高校生が住んでると聞いたから、これで良ければ食ってくれ。」

 と、日切れのカップラーメン(味4種類各1ダース計48個)を届けてくれました。

 その方はカップラーメンの工場に勤めていて、出荷できない日切れの在庫を度々分けてくれました。(珍しいカップラーメンで、フリーズドライ製法だかなんだか。ペペロンチーノ味が一番好きだったな。一番人気のない味らしいが・・・。)

 Wさんは高校の英語教師だったこともあり、Wさんが来てくれるときは、いつも英語の勉強を教えて貰いました。

 ある日私が、

 「時間がなくて、受験勉強が間に合わない。こんなんで受かるわけがない。」

 と弱音を吐くとWさんは、

 「入試の範囲は高校3年間なんだから、

 『今開いたこのページが出る!』

 と信じて、教科書にぶつかっていけ!」と。

 「入試に近道があると思うな。参考書や教科書に真剣に向き合った時間しか、自分の力にならないよ。」

 別の日、

 「もし大学受かっても、お金がないから行けないと思います。どうせ行けないのに、頑張ってもしょうがないじゃないですか。」

 とイジけたことをいう私にKさんは、

 「お前な、そんなもん受かってから言えやゴルァ(# ゚Д゚)!」

 「受かってもいないのに、金がどうのこうの言ってんじゃねぇ!」

 「お前はいつもそうやって、何かをやり遂げる前に嫌になって、できない理由ばかり、逃げ道ばかり探して。」

 「受験は、そんな弱い自分の心との戦いなんだと俺は思う。」

 「受かって、お金がなくて大学行けなかったとしても、『やり切った』という事実は残る。そういうのが生きる上での財産になるんだと思う。」

 S先生の友人は、みんな熱かった。 熱すぎる。

 それはきっと、S先生が、熱い人だったからなんだと思います。