10.死んでも死にきれないという「希望」

ホームレス高校生編

 俺の人生は一体どうなってしまうんだろう。 幼稚だった私は、

 「俺の人生、ろくなもんじゃないな。夢も希望もない。いっそ死んでしまったほうが楽じゃないか」

 と考えるようになりました。

 毎日どうやったら楽に死ねるだろうかと考えながら、夜の町を徘徊しました。


 でも、死ぬのが怖くて、死ねなかった。

 死んでしまったら、その後どうなるんだろうと思うと、怖かった。

 このままの人生で死んでしまったら、絶対悔いが残ってしまうんだろろうなと。

 こんなクソみたいな人生で、終わりたくない。

 こんなんじゃ、俺は一体何のために生まれてきたんだ。

 悔しくて、辛くて、絶望的で どうしようもない

 まるで地下の牢獄に閉じ込められているような感覚

 でも、そこには、死んでも死にきれないという「希望」がありました。

 こうして振り返ってみると、この頃の絶望感が、私のアイデンティティになっているのだと思います。

 あの頃のどうしようもない絶望に比べたら、今の悩みはハナクソみたいなもんだなと、そう思えるメンタルの強さの源になっています。

 追い詰められた先に生き抜く知恵が生まれる

 私の様子がおかしいことに気付いた友人が、高校の担任の先生に事情を話してくれ、夏休み目前のある日、担任に呼ばれました。

 担任は体育教師3年目、25才の健康美人。 こんな姉が欲しかったなーと思わせる、面倒見の良い姐御肌。

 生徒指導室に入るなり、

 「あんた!家出状態になってるのに、なんで私に相談しないの!!!」と、もの凄い剣幕で怒られました。

 ホームレス高校生になった経緯を洗いざらい話すと、

 「私と同い年の人と付き合ってるとか、正直、衝撃的すぎてなんと言っていいやら。でもあんたは悪くないね。お互い真剣な交際だったんでしょ。でも淫行条例に引っ掛かると言われれば、それは彼女さんも怖いと思う。仕事も失ってしまって。」

 「私なりに、あんたの役に立てないか考えてみるし、他の先生にも相談してみる。」と。

味方でいてくれる人が1人でもいれば生きられる

 お前は悪くないと言ってもらえたこと、嬉しかった。

 I先生にこう言われるこの時まで、

 「俺はなんて親不孝で、ダメなやつなんだ。」

 そんな風に、悩み苦しんでいた私にとって、I先生の言葉は、救いでした。

 自分は生きてもいいんだと、そう思うと、気付くと泣いてしまっていました。

 人は、自身の境遇に泣くのではなく、温かい励ましに涙を流すのだと知りました。

 後日I先生から、警察と市役所の福祉課に相談するように言われました。

 それと、I先生が母親と会って話をしたと聞かされました。

 要約すると、「あんたみたいな若い女に何が分かるのか。教師面して偉そうに。高校の教育が悪いからうちの大事な息子が女に狂ったんだ。責任とってお前が面倒を見ろ。」

 的なことを言われ、話にならなかったそうです。

法律は、時に俺たちを守ってくれない

 警察の件は以前の出来事を伝えると、

 「じゃあ市役所の福祉課に一緒に行ってみよう」と言ってくれました。

 ですが、福祉課への相談は、何も成果はありませんでした。 警察と同じように、既に母親が先に手を回すというか、

 「女に狂ったとんでもないふしだらな息子」

 ということになっており、

 「女性と別れて早く家に帰りなさい。」

 と言われるばかり。

 I先生が懸命に、

 「それができなくて可哀想な目に遭っている。福祉の観点から何か方法はないか?」と訪ねても、

 「児童福祉法は18才未満が対象です。あなたはもう18才だから、法的には保護される対象ではない。実質成人と同じ扱いです。市としては家族を引き裂くようなことは推奨できない。」

 と、冷たく言われました。

 日本の法律って、なんかおかしい。

 と、漠然とそんなことが心に浮かんだことを覚えています。

  I先生は帰り道、

 「かえって辛い想いをさせてしまったかもね。ごめんなさい。」と。

  先生は何も悪くないですから。(と、泣く私)